阿波の遊行弍
言葉の奥底に眠る物語
言葉が音楽へと変わる瞬間、そこには名付けようのない感情が芽生えます。「阿波の遊行弍」では、歌詞の背後に隠された文脈や多層的な意味を、丁寧な思索とともに紐解いていきます。この緻密な解釈のプロセスこそが、楽曲に真の命を吹き込み、聴き手の心に深く永く響き続けるための指針となるのです。
13:一宇村の繰り上げ音頭「松岡耕造の召集令」 音頭:切東義夫
一宇村は、剣山系北麓の山村。ここでの盆踊りも、優秀な音頭出しを産出している。
切東さんもその一人で、「松岡耕造の召集令」の出典は定かではないが、
おそらく戦時中の講談、浪花節の新作を聞いて、自分で盆踊り音頭に作り替えたものであろう。
「広島の第五師団に入隊せねばならぬ」あたりからは声涙下る。まるで「反戦歌」である。
旦那喜んで下さいませよ (アラサコラサ)
昨日まで 今日までも ただ村方の厄介者よ
明日から軍服身に纏や いかにはばかりならぬ軍人なれど
生きるも死するも国のため
それにつけても旦那様 明日をも知らない病の床の女房と
明日の命も分からない 病の床の女房と
西も東も分からぬ 二人の幼子を どうぞお願いいたしますと
温いものとは そんな贅沢 言いません
冷たいご飯の残りでも 犬や鶏にやるような
餌の残りで結構です 恵んでください 旦那様と
涙ながらに頼んだら (サノヨッコイ ヨッコイ オイトマカショ)
聞けばなるほど 気の毒じゃ お世話はいたしてやりたいが
あんた一人を世話したならば ほかのやつらも世話せにゃならぬ
ここがおいらの苦しい苦しい胸の内
勝手気ままじゃ 人情なしじゃと怒るなよ
奥にお客が見えている 私にとっては大事な大事なお客さん
また出直して来てくれと 言われたときに松岡が
無理を承知でお願いです 旦那さまに見放され
頼るところがどこにあろ 明日の朝の午前八時がきたなれば
広島の第五師団に入隊せねばあいならぬ
いかに いかに御国のためとはいえど
何も知らない幼子や 病の床の女房を 家に残してなんで出征ができようか
どうそお願い致します こーの通りでございます
なにとぞなにとぞ 聞いてください 旦那様 このとおりでございますと
畳に手をつき 大の男が 頭を下げて涙ながらに頼めども
(サノヨッコイ ヨッコイ ヨイトマカショ)
タバコ輪に吹く アノ面憎さ (アラサ コラサ)
も少し先までやりたいが かように音声ままならず
これで御免をこうむりまする あとは先生に よろしく頼む
(サノヨッコイ ヨッコイ ヨイトマカショ)